18. エーこんな所にも桜

「鼻が悪いなんて、犬より嗅覚がよけりゃアメリカンドックだよ。わっはは。
信号機に横断歩道だ。あーこの道は何時か来た道だよ。国道49号に間違いないよ。
高速道路が出来る前は郡山からこの道路を通っていわき市に仕事で
何十回も往復しているよ。小野町から入ったんでどの辺か解かんなかったなあ。
左の方だと思うんだが、奥のほうに家がある樹木があるがさくらで無いし。」
「行き過ぎたのと違うの、左に自動車整備工場があるわよ。戻ってみたら停車します。」
「ワンワン」
「シュンちゃん右で無いらしいよ。左を見てね。エー右手に桜が見えるわよ。あれじゃないの。」
 僕には本当は桜の香りはわからないんだよ。マーちゃんが言った通り、
僕も行き過ぎたと思ったから頷いただけなんだ。
 ひーちゃんは、と阿部先生の桜の資料とを持って車から飛び出し戻ってきた。
「岩倉桜でなく、馬場桜だって。」
「エッ、馬鹿ざくらあ?」
馬場ザクラ
「ババーじゃあない馬場さくら」と言い残して、今度は、バカチョンカメラを持って
車の往来する隙間を縫って道路を渡り三分咲きのさくらのアングルを考えて
バシャバシャとシャッターを押している。
 ひーちゃんの話によると村指定の天然記念物で樹齢700年もたっててね、
根元から4本の幹に分かれていて、一本が腐れたして、カットされ
樹脂で固められていたってさ、またね、残っている3本の幹の一本が49号に懸崖のように
道路に突き出してイタって、そして、神社があるのか鳥居と階段があったってさあ。
「おい、髭犬さん、俺だって馬鹿みたいに廃棄ガスを毎日毎日吸ってさ、
幹が枯れてもツッ立っているのはさあ、お前さんのように歩けないからショウガナイのさ、
でも、満開に咲くとさ、綺麗だと頷きながら通っていくよ。この時は男冥利さあ。」
「わんわん」
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