3.近代役場と時を刻む桜

 役場の中を見渡すと木製造りでドームのように天井が高く広い、
フンダンに木をつかいヨーロッパの山間部の庁舎のような感じである。
 桜のある東麻生を観光課に尋ねて見ることにした。
 「すみません、お尋ねしますが。」 
と声をかけると
 「なんでしょうか。」
と都会の市役所のドライぽい若い男性が応対してくれた。
 「東麻生にある古木のさくらの場所はわかりませんか。」
 「少し南に行くと東麻生にある神社の所にあるはずです。」
と言って住宅地図で説明して頂いた。
 「すみませんがコピー頂けませんか。」
 「10円かかりますが宜しいですか」
 「はい」
と言ったもののお金を持っていないでお願いしていることを恥ずかしく心に思った。
 車に取りに行こうとすると一緒にいた荒井さんが
 「わたしがもって来ます」
と言って車に戻り小銭入れを持ち帰り10円を支払ってくれた。
種蒔桜
 コピーの地図と北会津の観光パンフレットを持って、
車に戻り東麻生に向かって南に走ると右手に十数件の部落に神社が見える。
 道路を右に折れ神社に近づくが、桜はあるが、古木の桜が見あたらない。
 神社の建物の後ろ手にあるかもしれないと部落の家並みの間の細い道を
古木の桜を探しながらゆっくりと進む、神社敷地の西側の角に
大木の落葉樹があるが見当たらない。
 神社の裏手の農道まで出てしまった。
北西を見ると最近建てられただろう住宅の隣に墓があり桜がある。
 「あった、あれだ。桜だと」
声を出した。
 農道を右に折れ、住宅の北側を左に折れ墓地の前で車を止めた。
 墓の中央に種蒔桜が枝を大きく広げ数え切れない白い花をつけ、
幾代の人々が自然とともに生きた姿を知っているように優しく立っている。
思わず手を合わせた。
 西の方に広がる田園の奥に飯豊の山並みが白い帽子をかぶり微笑んでいる。
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