3.蕎麦打ち名人

そば道場の木製看板を見て、「ここだ。」と5人全員が気づいた。
 戸を引き開くと食堂という雰囲気でなく、暗い母屋と作業小屋をつなぐ
小ぇちゃなコンクリートの階段があり、ドアの入り口もあり開いている。
 「こんにちは。」
 「ごめんください。」との声に、母屋のから背と腰を丸めた、ばあちゃんが出てきた。
 「蕎麦大丈夫ですか。」
と尋ねると。
 「予約しているお客さんですか。」
と答えが返ってきた。
 
 「大丈夫ですか。」
 「はい、入って、右に行ってください。」
との言葉に案内されて家の中にはいると、やはり作業小屋に見えるが、
先に進むとコンクリートの踏み石がある普通の家の土間より高い床の間の和室がある。
 「いらしゃいませ。」
と白い作務衣と帽子を被った27、8歳の麺職人が挨拶して畳の部屋へ案内した。
 和室の部屋は、8畳二間に座卓が4つ置いてある。
入り口の方の2つ座卓には、予約席と書いてある。
 5人は奥の座卓に3人、荒井さんと私は、残りの座卓に座った。
 間もなく、先ほど答えてくれたばあちゃんが、
 「今日、月曜日なんで、客余りいないもんと思い、おとうさん山菜取りにいちゃまった、
まもなく、帰ると思うんす。」
木ざしさくら
と言いながら小皿に漬物を持って注文にやって来た。
まさか、今から山に向かえでも行くのかな。
大分待たされるに違いないと一瞬、心配感が心をよぎったが、まあいいかと二人ともそば膳を注文し、部屋を見渡すと、入り口付近の予約席のある8畳の奥に厨房が見え、
先ほど案内してくれた蕎麦職人が腕を動かし始めている。
 視線を上に向けると、天井付近の壁には、
福島県そば打ち名人の表彰がかけられている。
 座卓の座った席の脇を見ると1m角のガラス窓の奥に
2畳ほどの蕎麦打ち道場があり、麺棒が木剣のように6本ばかり掛けられている。
 ガヤガヤと10人ほどの予約客と一緒に、
ばあちゃんの声と店主のお父さんのらしき声が聞こえる。
団体客の一人は、常客らしい。後は殆どがおかあさんたちであり、
関東の方面から旅人である。座卓に座り、いろんな話をはじめている。
 蕎麦膳が運ばれてきた、ふきのとう味噌、山菜のてんぷら、冷たい手打ち蕎麦である、
会津の蕎麦は細くて、腰のあるのが特徴である。美味である。
主人のおとうさん、年齢から察するとばあちゃんの息子さんらしい。
 蕎麦打ち作務衣に着替える間もなく、道場に入り蕎麦打ちを始めた。
10人分を一回で打つ、麺を麺棒に巻き、布のロールようにして伸ばしていく、名人芸である。
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