3. 桜を撮るおじさん  関の桜

北へ北へとランクスくんは走っていきます。
湯沢市と言うところで、ひーちゃんは懸命に地図とニラメッコしています。
 「えーー、協和町の桜は高速道路に乗ってか、でもなー、秋田市の方に行って又戻ってくると
 角館の桜はナイターになってしまうよなあ。今日は角館だけにしようーと、協和町の桜は来年だ。
 角館に直行――。」
 「高速道路に乗るの、乗らないの。」
と、マーちゃん。
 「乗らない、乗らない。信号を真っ直ぐ北へ。」
ドンドコ、ドンドコ、北へ、北へ横手を通って現在地点は、夏の花火と冬のかまくらで有名な
大曲と言うところらしいです。ここで、西北の秋田市に向かう国道13号とお別れして、
国道105号で、また北へ北へ、北の角館――だって。
ひーちゃんが寝言で言った名前だよー。
ところで、角館は、なんか美味しいもんがあるかな。
モロコシか。僕の好きなモンはないかな。でも“角材”を買いにきたんで無く良かったです。
国道105号のノドカな風景を眺めながら一本道を北に進んでいきますが前と後ろに観光バス、
自家用車とランクスくんの仲間や友達が連なっています。
 「さくらがあるよ左前に結構古い桜だよ。お墓もあるよ。三脚を据えたカメラマンもいるよ。
 止まって、止まって、写真とるよ。」
と、ひーちゃん。
角館の桜
 「あーそうね。左に止まります。」
と道路の端ギリギリに止めると大型バスがブーと通り過ぎて行きます。
道端に数基の墓標が車の音を五月蝿そうにしている傍で背のがあまり高く無い、
古木の桜が白い花を一杯着けて茸が笠を広げたように佇んでいる。
ひーちゃんはカメラを持って飛び出していった。マーチちゃんは後部座席の窓を開けてくれので、
ぼくは、耳をピンと伸ばして、ひーちゃんを追っかけた。
 「毎年、桜の写真を撮るんですか。」
 「この辺の桜をね。」
と、おじさん。
 「何と言う桜ですか。」
 「何と言う桜かな。」
写真をバチバチ撮り終えたひーちゃんが戻って来るとランクスくんは先を急ぐように出発した。
 「カメラマンおじさんもね、何と言う名の桜か知らないってさ。ゆっくり走ってよ、
 停留所あるから。えーと、関と書いてあるから関の桜としてでもおこうか。」
と、ひーちゃん。
 「関の桜か名無しの桜と言われるよりいいか。」
と、言う声が後ろの方からぼくには聞こえた。
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